東京の音楽シーンと出会いから生まれたPHONON
PHONONの創業者 熊野功雄 と Alex Prat (Alex from Tokyo)の出会いは1990年代後半。渋谷のレコード店「Mr. Bongo」や制作会社を通じて知り合い、当時の東京の音楽シーンで活動を共にするようになった。
「90年代末の東京は、ダンスミュージックのブームで盛り上がっていて、良いパーティーがたくさんあり、しのぎを削っていた。」
東京の音楽シーンはインディペンデントで面白かったと話す2人。特に当時の渋谷は世界一のレコード街だった。渋谷のレコード店「Mr. Bongo」で働いていたAlexと熊野氏が出会い、東京の音楽パーティーを衛星ラジオで紹介する番組もやっていた。
熊野氏はマスタリングエンジニアとして、チャート上位を賑わすトップミュージシャンの数々のヒット曲の最終音質調整を手がける。一方でAlexはニューヨークやベルリンを拠点に、DJやプロデューサーとして世界中の音楽カルチャーと関わってきた。二人の経験が融合し、PHONONが誕生することになる。
PHONON誕生 – スタジオと同じ音をヘッドフォンで再現するという挑戦
2009年、PHONONは「音楽のイマジネーションを正確に伝える」という使命のもと創業された。当初はスピーカーや音響アクセサリを手がけていたが、「オーディオアクセサリだけでは市場が限られる。ヘッドフォンならより多くの人に届けられる」との考えから、ヘッドフォン開発へとシフトした。
スタジオで聴く音と良い音が鳴る環境は整えられている。でも、ヘッドフォンではそれを再現できるものがなかった。PHONONは、スタジオと同じ音を再現できるヘッドフォンを作るという目標を掲げた。
ヘッドフォン開発 – 常識を覆すチューニングと技術
PHONONのヘッドフォンは、ただの音響機器ではなく、一つ一つのモデルが異なるチューニングを施されている。プロフェッショナルが納得できる音を作るため、設計には常識破りのアプローチを取り入れた。業界の人には「狂った設計」と言われることも。
その結果、SMB-02 は「ヘッドフォンの聖杯(Holy Grail)」と評され、NY Timesをはじめとする海外メディアやオーディオアワードで高い評価を獲得。Jeff MillsやDepeche Mode、世界のトップミュージシャンたちがPHONONを愛用している。
「4400は小型ながらパワフルな低音を実現し、クラブで理想の音を再現するために作った。DJやファッションカルチャーの中でもAlexの活動を通じて広がり、NYやベルリンでのブランディングにつながった。」
また、PHONONの技術は独自の設計に支えられており、細部まで計算されたチューニングにより、どのモデルもユニークな音を持つ。
プロフェッショナルたちに愛される理由
PHONONのヘッドフォンは、数多くのトップアーティストやエンジニアに支持されている。
「Jeff Millsは10年以上愛用し、最近はSMB-01Lを使っている。Ken Ishiiさんも絶賛。井上鑑さんをはじめ、クラシックや弦楽器奏者にも支持されている。彼らがレコーディングした音を他のヘッドフォンで聴くと安っぽく聞こえるが、PHONONならそのままの音が返ってくるから気に入ってくれている。」
プロモーションに頼らず、口コミで広がってきたPHONON。「所ジョージさんが取材なしで番組『世田谷ベース』で紹介し、とんねるずの木梨憲武さんも使ってくれている。」と熊野氏は語る。
未来への展望 – ヘッドフォンライブと音楽体験の拡張
PHONONの次なる挑戦は、ヘッドフォンを通じた新たな音楽体験の創造だ。
「今後、ヘッドフォンライブをやろうと企画している。これはかつて大瀧詠一さんが行った伝説的な試み。NAMM ShowではDJによるヘッドフォンライブも企画している。」
また、オーディオマニアだけでなく一般層への浸透も視野に入れている。
「若い世代がアナログレコードや良いスピーカーを求める流れが生まれている。世界的に音質に対する意識が高まりつつある今、PHONONはその時代を牽引する存在になりたい。」
音に真剣なすべての人へ – PHONONからのメッセージ
「PHONONのヘッドフォンは、ただのリスニングデバイスではなく、音楽家やエンジニアが意図した音をそのまま伝えるためのツール。音に真剣な人たちによって支えられ、ここまで成長することができたことに感謝している。」
「最高の音を届けること、それがPHONONの使命であり、これからも進化を続けていく。」
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